こちらのページでは、家族信託を利用し問題を解決できる事例をご紹介します。
現在、妻Yは重度の認知症になり、老人ホームに入所している。
また本人Xは、長男夫婦と同居しており、長男夫婦には身の回りの世話をしてもらい、大変感謝している。
もし本人Xが先に亡くなったら、認知症の妻の介護費用のため、すべての財産を妻Yに相続させたいと考えている。
また、妻Yの死後は、同居している長男には自宅、次男Bには賃貸マンション、三男Cには預貯金等の金融資産を遺したいと考えている。
・認知症の妻Yは遺産を相続しても自分で管理できない。
・認知症のため、妻Yは遺言を作成できない。
⇒妻Yの死後、遺産分割が難航する恐れがある。
◆成年後見制度の代用としての財産管理ができる
本人Xは、自宅や賃貸マンション、預貯金等の金融資産を信託財産とし、長男Aに管理・処分を任せる旨の信託契約を締結することで、Xの老後の財産管理だけでなく、X亡き後、第二受益者となる妻Yの財産を継続的に管理・処分できる。
つまり、実質的に成年後見人による財産管理の機能を果たすことができる。
◆遺言の書けない妻Yに代わり、妻Y亡き後の遺産分割を指定できる
X及び妻Yが死亡したら信託契約を終了させ、その時点で残っていた財産のうち、自宅は長男、賃貸マンションは二男、預貯金等の金融資産は三男に承継させる旨を信託契約の中で定めておくことができる。これにより、遺言の書けない妻Yに遺産を遺すリスクを解消し、子同士の遺産のトラブルを回避できる。
同居している長男夫婦には子供がおらず、遠方で暮らしている二男夫婦には子(孫)がいます。
妻が亡くなり、将来のことや、先祖から受け継いだ土地をどう残すのかを考えるようになりました。
今、一緒に暮らしている長男の妻Aには、私の妻が病床に付している時もよくしてもらい、私亡き後、もし長男が先に亡くなることがあっても、安心してここで暮らしてほしいと思っています。
相談者様は、現在、長男夫婦と3人暮らしです。
畑を耕作しながら穏やかに暮らされています。
長男夫婦との同居も20年以上になり、誠実な長男の妻Aが「老後も安心してこの家で暮らせるように。」という願いをお持ちです。
一方で、もし長男が、長男の妻Aより先に亡くなれば、自分たちが代々築いてきた財産が長男の妻Aの実家側に流出していくのでは・・・という不安もお持ちです。
遺言の効力は一代限り(指定できるのは直接渡す相手のみ)なので、遺言では資産を代々承継していくことは出来ません。
それに対して、家族信託を利用すれば、世代を超えて財産を承継していくことが可能です。
超高齢社会(全人口の約5人に1人が65歳以上)においては、認知症リスクに備えておきたいという希望から家族信託を利用されるご家族が増えています。
ただ、今回の場合は、認知症対策という視点より、相談者様の想いをご自身が亡くなった後に具現化していく目的で家族信託を選択されました。
今回の事例で大きなポイントは2つ。
一つは、「受託者の権限の範囲」です。
例えば、受託の権限として、古くなった家屋をリノベーションすることは可能としても、売却はできないというように信託契約に組み込むなどです。
もう一つは、「受益権の代々の承継」です。
少し専門的になるのですが、信託で利益を受ける受益者を複数にして、代々承継できるように設計することが出来ます。
例えば、第一受益者を相談者、第二受益者を長男、第三受益者を長男の妻A、などです。
こういった代々承継されていく信託を受益者連続型信託と呼ぶこともあります。
ただ、とても難易度が高く専門性が高いことや、時代の変遷とともに信託の解釈も変わる可能性が高いので、まだまだ普及にはハードルがあるのも事実です。
友人の母親が認知症を患い、施設に入居させなければならない事態になりました。友人は、母親が一人暮らしをしていた実家を売却し、その資金にしたいのに、実家の権利者が母自身になっており、売却は無理。定期預金を引き出すのにも「成年後見人」を付ける必要があると金融機関から言われ、とても困ったそうです。
私たちも同じようなことになってしまわないように『家族信託』をやりたいです。我が家は父も母もまだ健在で自宅で畑を楽しみながら生活をしています。
調べてみると、実家の土地は二つの土地から成っており、一つは農地でした。どちらの土地も母名義、建物は父の名義でした。信託契約は両親ともに一つの契約になるのでしょうか。
相談者様のお母様は先代から受け継がれた土地を所有されており、売却した不動産の利益についても相当額お持ちでした。「実家」と一括りで見ると、まるで両親の共有財産のように見えますが、実際は、二つの土地、一つの建物。それぞれが所有されている財産です。
信託契約をお父様、お母様、それぞれ別に締結されることで、信託契約が終了した際の帰属権利先(その財産の行く先)についても、それぞれの意向を反映させることが可能です。
もし仮に不動産が共有名義であったとしても、それぞれの持分を各自の信託財産目録に追加することができます。
また、信託契約は必ずしも1本の契約になるとは限りません。
その方のニーズにより、「目的別」「財産別」「将来の承継者別」「管理者別」といった観点で信託契約を複数に分けることもあります。
「農地」は農地法という法律で規制されており、農業委員会の許可または届出がなければ、売買や贈与ができない仕組みになっています。(相続による所有権移転登記は農業委員会の許可・届出は不要)「信託」も売買や贈与と同様に、農業委員会の許可等が必要になります。
農地法では、国内の農業生産の基盤である農地が現在、将来における国民のための限られた資源であることから、「農地」を「農地」以外のものにすることを規制し、また国内の農業生産が減らないよう調整し、国民に対する食料の安定供給を図ろうとしています。
そのようなことから、農業従事者でない子供等に農地の管理を託すという信託の仕組み自体、国が考える農地の方向性にそぐわないと考えられます。(農地を信託することは、農業協同組合等が引き受ける場合を除き、原則禁止)
今回、委託者兼受益者であるお母様は、もし自分が認知症になって施設に入所することになった場合は、孫たちに現在の土地を有効活用してほしいと望まれていました。
一つの土地だと思っていた土地に「農地」があり、信託財産にできないことを知り、今回は、耕作を手伝ってくれている娘に「農地」を生前贈与されるという方向に着地されました。
「農地」については、それが存している区域が「市街化調整区域」であるかどうかなど、制約を受ける場合があります。信託や生前対策を含め、事前に専門家へ相談されることをお勧めいたします。
叔母は、夫に先立たれ、現在、所有のマンションで一人暮らしをしています。娘さんが一人いたのですが、幼少の頃に病で亡くなり、子供はいません。
姪である私が、時々、電話をかけ無事を確かめたり、病院に付き添ったりしてきました。
そんな折、叔母から「生活に不安を感じるようになったので、施設に入ろうと思う。」そして「今後の財産管理はあなたに任せたい、残った財産はあなたに相続してほしい。」と伝えられました。
私と叔母の間でも“家族信託契約”を結ぶことは可能でしょうか。
A子さんには、預貯金と共に、現在お住いのマンションがあり、もしも自分が認知症を発症したらマンションの売却が出来なくなること、そして、施設に入ってからも何かと費用は必要だろうと懸念を抱いていらっしゃいました。
できれば、
・マンションの売却やその後の金銭の管理を、姪であるB子さんに託したい。
そして、自分亡き後、これまでの感謝の思いを形にしたい、
・残った財産は、B子さんに相続させたい。
という希望をお持ちでした。
ご相談いただいた時点で、A子さんには、法定相続人が7名おられたこともあり、「遺言書を書かなくては」という思いとともに、今後の老後生活への漠然とした不安もお持ちでした。
『家族信託』という制度があると知ったけれど、姪であるB子さんとの間では利用できないのでは・・と思われたそうです。
信託契約は、金融機関等が営利目的で結ぶ“商事信託”と“民事信託”、この2つに分類されます。
営利目的ではなく、信託契約を結ぶ際に、契約相手(受託者)として、家族を選ぶという選択肢をされることを『家族信託』と呼んでいる・・というのが実際のところです。
『家族信託』における“家族”をどう定義づけるのかという部分は重要ではありません。
今回のA子さんのケースであれば、「姪と信託契約を結んだ」と表現するのが自然かもしれません。
A子さんは、これからの老後生活について、B子さんと十分、話し合いができたと納得されていました。
このように、本人(委託者)が今後をどのように過ごしたいのか、どんな風に終わりを迎えたいのかを、関係する人と話し合えるというのは、『家族信託』を利用するメリットの一つと言えます。
母が亡くなってしまい、父は、現在、一人暮らしをしています。一人娘の私になるべく負担をかけずに、余生を過ごしたい、もし、認知症を発症したら施設に移るので自宅を売却してくれればいいと言っていますが、認知症になってからは不動産の売却は難しいと聞きました。何か良い方法は無いでしょうか。
お父様は、一人娘であるA子さんになるべく負担をかけずに、余生を過ごしたいと考えていらっしゃったようです。
そこで、お父様と娘様に、生前対策として、生前贈与・公正証書遺言作成・家族信託をご提案し、それぞれのメリット・デメリットをご説明し、家族信託の仕組みを利用されることになりました。
家族信託とは、文字通り“家族を信じて託す”、自らが所有する不動産や金銭などの財産を、生前から信頼できる家族や親族に託す仕組みのことをいいます。
この仕組みを利用することになって、円滑な財産の管理や処分を行うことができます。
今回のケースでは、お父様が住んでいるご自宅と金融資産の半分を、一人娘であるA子さんに託すことになりました。信託したい財産の中に不動産が含まれる場合は、登記をする必要があります。家族信託を利用する場合、不動産の登記は「信託の登記」という方法になります。
こうして、お父様の不動産と現金1000万円がA子さんに託されることになり、将来、お父様が認知症になり判断能力を喪失したとしても、A子さんがお父様に代わって、不動産の売却をすることができるようになりました。
父は、高齢のため最近物忘れがひどくなってきています。
このままでは、財産の管理が難しくなってしまい、成年後見人を選任する必要が出てきそうです。
父が財産を失わないように、息子である私が財産を管理したいと考えているのですが、良い方法はないでしょうか。
お父様の判断能力があるうちに、財産をお父様から息子さんへ信託すれば、息子さんがお父様に代わり財産を管理できます。お父様は息子さんへ財産を預け、必要に応じて息子さんから収益や生活費を提供してもらうようにします。
この方法は贈与や成年後見でも行うことができますが、それぞれの方法には欠点があります。
贈与の場合、お父様の財産は完全に息子さんに移転し、息子さんの自由に使うことができてしまうため、いざ必要になった時、財産が残っている保証がありません。
成年後見の場合は、裁判所への手続や報告が煩雑ですし、不動産や株式の売却などの必要な財産の処分も自由に行えなくなります。
私には、妻との間に障がいのある一人息子がいます。
将来、自分の資産を息子に遺したいと考えていますが、息子は自分で財産管理が出来ません。
息子が両親の遺産を相続した後、遺産を適切に活用して生活できるようにするにはどうすればよいでしょうか。
お父様は信頼できる甥と信託契約を結び、甥に「ハンコの権限」を預けます(=自分の財産を甥へ委託)。お父様が存命の間は、お父様が受益権(預けられた財産から得られる利益を受け取る権利)を持ち、預けた財産を必要に応じて受け取ります。
そしてお父様が亡くなられた後、長男が生存している間は長男を受益者に設定し、預けた財産を甥から必要に応じて受け取ります。甥には、管理のお礼として「信託報酬」を信託財産から支払うことも可能です。