私が学生だった頃は、日本の好景気の名残が十分あったので、周りで奨学金を使って大学に通う人は少なかったように思いますが、昨今は、奨学金を利用して大学等に通う人は多くなっている印象があります。
実際、どれくらいの人が奨学金を利用して大学に通っているのでしょうか。
ネットに散見する情報によれば、「申請したが不採用」「希望するが申請しなかった」数値を含めると二人に一人は奨学金を必要としているようです。
奨学金を利用して私立大学に通う学生から「卒業と同時に400万円以上の返済が始まる」という言葉を聞いたことがあり、実家を離れ、遠方の大学に通う場合、家賃や生活費も借りたりする現状があるようです。社会人になれば、貯蓄や海外旅行、車や結婚、マイホームなど、成し得たいことも増えるのに大変だな・・と感じたことがあります。
さておき、この奨学金を利用する際につきものなのが「保証人」。
大体、保護者(父親など)だけでは足りず、複数名、用意することが求められ、実際、保証人や連帯保証人になっている人も現状多いと思います。
新聞の一面で気になる記事がありました。
”奨学金返済 過払い不当 札幌地裁判決 機構側に返済命じる”
目を通してみると、いわゆる連帯保証人ではなく、保証人という立場の人が、債務者の返済が滞り、連帯保証人と同じ額の返済を請求されていたケースが、2010~2017年の間に825件あり、請求額は約13億円もあるそうです。
保証人は、連帯保証人と違い、「分別の利益」が認められ、連帯保証人なら返済額の滞りの全額を支払う義務があるのに対し、保証人の場合は、複数人の場合、それぞれ等しい割合で返済義務を負うとされます。
しかし、知識の無い保証人は、「まさか機構が不当な金額を請求してはこない」と思ってしまうのでしょう・・債務の全額を支払っている人が大勢いるとのことです。825件中、「分別の利益」を主張したのは、たった31件だったそうです。。
裁判所は、「分別の利益は保証人が主張しなくても効果を生じる」と指摘し、訴えを起こした原告の返済は無効、不当利得の返還を求める権利があると結論付けたそうです。
私が18歳だった頃は、大学に行くかどうかは、親の経済状況、自分の進路で選択できた時代でした。
しかし現在は、「大学ぐらいは・・」という感じで、無理をしてでも卒業しようとする人が多いように感じます。また、最近では公の機関ではなく、一般の会社が奨学金目的でお金を貸しているケースも多く、以前は、費用が工面できない場合、「奨学金制度が利用できる人は進学する」というイメージでしたが、最近は、「借金をしてでも大学に行く」というイメージがぬぐえません。
私学の学費も学部によっては、かなり高額。
18歳の時点で、自分の将来の債務も含め、決断を迫られるという状況を憂う今日この頃です。
2021.5.15
梅谷事務所/高橋