成年後見制度とは、判断能力が不十分な方を保護するために、後見人を定め、家庭裁判所の監督のもと、財産の管理や契約などを行う制度です。
①法定後見
一定程度、判断能力が低下した場合に、法律の定めにより、家庭裁判所が後見人を定める。
②任意後見
将来、判断力が低下するリスクに備え、本人が判断能力を有している間に、あらかじめ契約し後見人を決めておく。
信託契約はあくまで本人が結ぶ契約ですから、本人に正常な判断能力があるうちしか結べません。
これに対し成年後見制度は、本人が認知症になってしまった(判断力が低下してしまった)後でも決めることができますから、すでに認知症を発症されてしまった方の財産を守っていくのに適した制度といえます。
財産を維持管理するだけでいいのであれば、認知症になったあと、成年後見制度を利用するのも悪くはありません。しかし、成年後見制度には弱点もあります。
成年後見人は、家庭裁判所に定期的に報告する義務を負います。
また、被後見人の財産を保全・維持することを何よりも求められるため、リスクのある新規投資は認められない場合が多いのです。例えば家賃収入増加のため、被後見人所有の老朽化した賃貸アパートを建替え・リフォームなどしたくても、非常に困難になってしまいます。
つまり、成年後見制度は家庭裁判所に監督されているという安心感はあるものの、財産の運用や処分に大きく制限がかかるため、柔軟な財産運用には向いていません。本人が元気なころに望んでいた意向通りの財産運用であっても、それを実現するのが難しい場合もあります。
1978年兵庫県高砂市生まれ、岡山大学法学部卒業。「法務・会計 梅谷事務所」「はりま家族信託相談室」代表司法書士および家族信託専門士。2016年より福祉・医療関係者向けに「成年後見人制度」や法律に関する実務について研修を行う「梅塾 care&law~」を定期的に自主開催するなど、数多くのセミナー講師を務める。明治42年創業以来受け継いできた「地元での信用・信頼、誠実な仕事」をモットーに、日々、法務の現場で活躍する。