例えば、遺言では、「財産は息子に。その後、息子も亡くなれば孫に。」のような、「次の次の相続人」を指定する書き方をすると、その部分は無効になります。遺言は、残した当人が亡くなった時に発生する相続についてしか効力を持たないからです。
これに対して、家族信託では、「次の次」つまり二代先(孫)以降の受益権の引き継ぎについて、指定することもできます。これを『受益者連続型信託』といいます。
受益者は、いま現在、存在している人でなくても指定しておくことができますから、理論上は「子が亡くなれば孫に、孫が亡くなればひ孫に、ひ孫も亡くなれば・・・」と、何代にもわたって指定しておくことも可能です。
ただし、現実的運用を行う必要性の観点から、『受益者連続型信託』には制限があります。
それは、「受益者連続型信託は、契約時から30年経過後の受益者の死亡によって、受益権を取得した受益者をもって終了する」というルール(30年ルール)です。
契約後、30年経った時に、受益者となっているのが息子のままであれば、その息子の後、つまり孫までは受益権は有効に引き継がれますが、契約による指定は、そこで効力を失ってしまい、ひ孫へ指定していても無効になります。
息子が早世し、契約後30年したときに孫が受益者になっているのであれば、ひ孫への受益権移動までは行われますが、その次を指定していても無効です。
このルールによって、永久に受益権の移動が続くような、現実的でない事態に陥ることを防いでいます。
1978年兵庫県高砂市生まれ、岡山大学法学部卒業。「法務・会計 梅谷事務所」「はりま家族信託相談室」代表司法書士および家族信託専門士。2016年より福祉・医療関係者向けに「成年後見人制度」や法律に関する実務について研修を行う「梅塾 care&law~」を定期的に自主開催するなど、数多くのセミナー講師を務める。明治42年創業以来受け継いできた「地元での信用・信頼、誠実な仕事」をモットーに、日々、法務の現場で活躍する。